【今からでも間に合う足腰のスロトレ】
『一生動ける体のつくり方』レビュー 石井直方・著 Vol.050
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
トレイルランの走り方やフォームにも理想があって、上りも下りも速い選手には共通している部分があるんですね。日ごろのロードの走りをしても、なかなか速くはなれません。
では、どうしたらいいのか?
トレイルでは木の根やがれ場、階段もあります。つまりは、動きのバリエーションを増やしていかなれけばなりません。そのためにトレイルランニングでは「筋力を高める」こと以上に「柔軟性を高める」ことが大切になってきます。特に股関節周りが固いと全身の動きが制限されて、サイドステップやクロスステップ、段差を飛び越えるといった、不整地を走る上で必要なさまざまな動作を行うことが難しくなるからです。何でもないような木の根や段差でつまづくことにもなります。柔軟性なしに、トレイルランのテクニック上達はありえないのです。
加齢による衰えが顕著とされる、太ももの前面の大腿四頭筋は、トレイルランニングでは上り下り、特に上り階段では頻繁に使用する、ぜひ鍛えておきたい筋肉です。
本日ご紹介する一冊は、 『一生太らない体のつくり方』『スポーツのための筋力トレーニング』など数多くの著書を持つ、石井直方氏による一冊。中でも2006年に論文で効果を実証した、『スロトレ(スロートレーニング)』の提唱者として知られています。
著者によると、スロトレとは、「ゆっくりとしたスローな動きで行うトレーニング」。効率よく筋肉を鍛えることができ、とくに中高年の方に向いているとのこと。その理由の一つは、運動中の血圧が必要以上にあがらないからだそうです。毎日行う必要はなく、一回にかかるトレーニング時間も15分から20分と忙しいビジネスマンにとって、取り組みやすいトレーニングと言えるでしょう。
これがマラソンやトレイルランのランニングスポーツにも役立つ内容なのです。
早速、本書のエッセンスを見てみましょう。
▼ここから
とくに顕著なのが足や腰を支える筋肉で、30歳から80歳の間に約半分になってしまいます。
学生時代に運動部に所属していた体力自慢の方でも、とくに運動していないと、10年間で筋肉は何もしていなかった人と同じレベルまで落ちてしまいます。
要介護となってしまった高齢者のうち、10人に1人の原因が骨折・転倒なのです。
ひざの痛みや故障が多い原因の一つは、2本足で立って歩くという行為自体がひさに負担をかけるから。
ひざがしっかりと安定して動くようにするには、大腿四頭筋とハムストリングを鍛えることが大切。
肩こりと五十肩は別の不調ですが、自分でできる対策や予防法は共通していて、肩回しなどで肩周辺の筋肉を鍛えることが基本です。
筋肉とは関係のないように思える「冷え症」も、筋肉の衰えが原因の一つであることが最近の研究でわかってきました。
柔軟性は「関節がどのくらいの範囲で動くか」という間接可動域によって決まります。つまり、体が硬い方は「関節が動く範囲が狭い」ということ。
可動域を決める要因
①関節の構造 ②関節を取り巻く組織の性質 ③筋肉の柔軟性
股関節を広く、スムーズに動かせないと、骨盤や腰椎のバランスが乱れてしまい、それが腰痛の原因になってしまいます。
近年、体幹トレーニングが流行しています。ただ、「安定性」を求めるがゆえ、「柔軟性」が軽視されている感も否めません。
▲ここまで
冬になって感じる「冷え性」も筋肉の衰えが原因の一つだとは、知りませんでした。著者によれば、筋肉が減少することによって、熱の生産量が少なくなるからだそうです。
「筋肉を鍛えるのに手遅れはない」「年をとっても体は柔らかくなる」という著者の言葉には、多くの人は勇気づけられるでしょう。実際に、私も練習生へのランニング指導を通じて、それを実感しています。50代、60代のランナーの方がトレーニングにより、筋力と股関節の柔軟性の双方を高めたことで、それまで頭打ちだったというマラソンタイムが「自己ベストを更新しました」という方が続出しているからです。練習量はそのままに、です。
2014年に発売された本ではありますが、今でも役立つ内容でしたので、ご紹介しました。日ごろちょっとした木の根や段差で転倒しやすいという方や、医者に「もっと足に筋肉をつけた方がいい」と言われたことのある方は、ぜひ買って読んでみてください。
【今からでも間に合う足腰のスロトレ】
『一生動ける体のつくり方』レビュー 石井直方・著 Vol.050

管理人:安藤大(あんどう ひろし)大阪府出身。プロ・ランニングコーチ。2012年から「はじめてのトレイルラン教室」を開講、21都道府県で1万人以上が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓発活動に注力し、グループで走る楽しさを伝えている。
15年で参加をした大会は「28か国、28都道府県」で100を超え、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現中。
2024年10月に『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。Amazon2部門1位&ベストセラーに。