【222日間で総距離8000km以上、累積標高差110,000mもの旅】 『グレートトラバース2 日本二百名山ひと筆書き』田中陽希・著 Vol.095
本日はファン待望の第二弾『グレートトラバース2 日本二百名山ひと筆書き』です。
日本ニ百名山を陸路は徒歩、海路はカヌーで8000km以上、累積標高差ではおよ110,000mにもなる道のりを走破してしまう青年のお話です。僕もブログ更新とBSプレミアムの放映をチェックしていました。本書はそのブログの内容に加筆・修正を加え、一冊の本にまとめたものです。
本書のタイトル「グレートトラバース」にNHKドキュメンタリーの「グレートレース」いずれのネーミングも探検家の関野吉晴さんの紀行ドキュメンタリー「グレートジャーニー」が元とも言われています。「グレートジャーニー」 は人類の足跡である南アメリカ・チリナバリーノ島からタンザニアまで(北ルート)のおよそ5万キロを逆ルートから遡って行く人力の旅(1993年12月 – 2002年2月)。
本書にある応援者の声のように「時間の都合上、山頂に着いたらすぐに下山する」と考えていたのですが時には2時間近く長居することもあると知って驚きました。
マラソンをしない人が長距離レース中に人が何を考えながら走っているのか気になるように、登山中の人の頭の中というのも気になるものです。この本を読むと田中陽希さんが旅の途中で感じたもの、道のりの険しさがより鮮明に浮かびあがってきます。
その土地や街の雰囲気、活気から田舎の過疎化問題までわかるのはいいですね。
一部心に残った文章を見てみましょう。
▼ここから
「すごいことをしていて、たくさんの人の注目を集めているからひとつ言わせてよ。あんたはたくさんの人に注目されているんだから、登山道がどんなに荒れていても、ぬかるんでいても、登山道のど真ん中を歩いてほしいのよ。歩きにくくなった登山道を避けるために、脇に脇にと歩いてしまうと、無駄に登山道を広げてしまう。だからどうかあんたにはまっすぐ歩き続けてほしい!」
僕は考え、彼の言うとおりに登山道のど真ん中を歩くべきだと思った。それと同時に、本当に自然を傷つけたくないのであれば、人が山へ入ること自体を自粛すべきだろうとも思えた。でも自然を知らなければ、守り方もわからない。
ヘロヘロだったのに、山頂に着くといつも疲れはどこかに行ってしまい、奥底から元気がみなぎってくる。
いつも見かけるアリが雨の日はまったく姿を見せないのはなぜだろう?アリの巣に雨水は浸水しないのだろうか?カエルはなぜ雨が降ると道路に出てくるのだろう?
自然界では晴れも曇りも雨も、すべてが恵みだ。
「いつも山頂に着いたらすぐに下山しちゃうのでしょ?」と応援の方に聞かれた。テレビではダイジェスト感がすごいので、そんな風に思われているらしかった。僕は山頂が好きだ。気持ちがいいときなんか、2時間くらい山頂で遊んでいるときもあった。
山で猟をするマタギの道具らしい。これらの装備をすべて合わせると軽く20kgを超える。これで草刈りは相当ハードだろう。「かなり辛い仕事ですよね」と聞くと、「辛いから楽しい」と笑顔で答えてくれた。
心が動いたたけで、身体が軽くなる。自然は本当に不思議な力を持っている。
人生が迷路だとすれば、人それぞれ違う迷路を進んでいる。この迷路には景色があり、季節があり、天気がある。ひとりで歩いているときもあれば、そうじゃない時もある。分岐の数も人それぞれで、間違った道の先には罠が待っているかもしれない。だけどいつも変わらないのは、自分で選択するということだ。
「修験の基本が歩くこと」とは、鎖場や岩場が続く険しい道を歩くだけが修験ではないのか?長い時間歩くことで、自然の美しさや険しさを体感することが修験となるのではないか?険しさを感じない大峯奥駈道を釈迦ヶ岳まで歩きながら考えた。
香川のうどん屋は週末に休むところが多いということだった。理由は、週末だとお客さんが来すぎて大変だからだという。
四国では4つの県が隣接している。それぞれの県民性をお金で表現することが多いらしい。例えば70円を拾ったとしよう。それを香川県の人は100円に増やして貯金する。お隣の徳島県の人はそのまま70円を貯金する。愛媛県の人はすぐに70円すべて使ってしまう。最後の高知県の人は100円に増やしてからすべて使ってしまう。最後の高知県の人は100円に増やしてからすべて使ってしまう。
▲ここまで
田中陽希さんの222日間にも及ぶ旅の軌跡、グレートトラバースを追体験することができる一冊です。その中には人生教訓の参考となる言葉もちりばめられています。
ぜひ休みの日に一読してみてください。
【222日間で総距離8000km以上、累積標高差110,000mもの旅】
管理人:大阪府生まれ。トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。2012年に起業、日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ、マラソン作家。指導歴12年で、初心者にもわかりやすい指導と表現で定評がある。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。2024年10月にAmazon(アマゾン)より電子書籍『極寒!はじめての北極マラソン』を初出版。