【あのテレビ放送の感動が蘇る!】
『グレートトラバース~日本百名山ひと筆書き踏破』田中陽希・著
「本当はもう少し北側にある抜海から鴛泊を目指す予定だった。しかし風と波の方向から考えると、さらに南の稚咲内から出発して、利尻の鬼脇へ上陸したほうがいいと判断した。もし当初のルートで漕ぎ出していたら、どうなっていただろうか。この判断が生死の分岐点だったと思う。(帯書きより)」
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
本日の一冊は、日本列島縦断7800kmを208日と11時間で人力踏破を成し遂げた、アドベンチャーレーサー田中陽希さんのその”軌跡”。
田中正人さん率いるチームイーストウィンド/Team EAST WINDと出会いから、日本百名山ひと筆書きに挑むことになったきっかけまで、活字の利点を生かして、知られざる舞台裏まで鮮明に書かれています。
「4つの海峡をシーカヤックで漕ぎ渡る」というのが田中正人さんの発言によるものだとは知りませんでした。
「これだけすごいチャレンジをしたのだから、燃え尽き症候群、次に困るのでは」我々は考えてしまいますが、達成後5ヶ月にして早くも「日本二百名山ひと筆書き」にチャレンジを表明されています。
これは日本の最北端・北海道の宗谷岬からスタートして、鹿児島県の佐多岬を目指すというもの。今回の歩行距離はおよそ8,000kmで、約7か月。出発日は2015年5月下旬(いずれも予定)
関西や関東の山々で再び田中陽希さんに会える日が来るかもしれません。
田中陽希さんの影響は大きく、六甲山でトレイルランツアー運営中に後ろからバタバタと足音が聞こえてきたと思ったら、「田中陽希さんに刺激を受けて、走っているんです!!」と女性登山者の方がもの凄いスピードで駆け抜けていきました。
NHKBSプレミアムを熱狂的にご覧になられていた方ならば、これは確実に買い!の一冊です。
『グレートトラバース~日本百名山ひと筆書き踏破』田中陽希・著
◆本書より
考えれば僕は今まで、自己中心的でつまらないこだわりやプライドを捨てることができず、時には責任逃れをしたり、極度のプレッシャーがかかると逃げ出してしまうこともよくあった。アドベンチャーレースという極限の状況まで追い込まれてしまう環境下で、僕の内面に潜む本当の自分を知り、チームメンバーから客観視され、指摘され、プライドだけでは自分を肯定しきれなくなっていた。
「日本百名山ひと筆書き」と題して挑戦をしようと計画したとき、陸上だけではあったが、すでに南下での人力踏破は達成されていることを知った。同じチームで一緒に世界を舞台に挑戦し続けているチームキャプテンの田中正人さんから「ならば海も人力で渡れ。それこそ全人未踏の挑戦ではないか」と激励を受けた。
登山小屋の休憩場を覗くと、すでに先客の夫婦がいた。百名産を登り続けて73座目。もう40年も登り続けているという。体力の許す範囲で無理せずチャレンジする姿勢に、身の丈に合った登山をする大切さを教えてもらえた気がした。
荒島岳は百名山の中でも思い入れが一番強い山だと深田久弥もいっている。ふるさとの山…僕にとってのふるさとの山である富良野岳を思い出した。
山小屋にはよく山登りが好きな人が働きにくるんだけど、山小屋の仕事が忙しくて全然登れないの。だから結局辞めちゃうんだよね。山小屋は山にいることが好きな人が向いてるね。-塩見岳・山小屋主
いつも以上に音のない世界が広がり、景色も何も見えない。こういう日の山の姿を知るのも貴重な経験だ。
この時期は登山者も少ないので、人との出会いもかなり減っていた。ひとりの時間も大切だが、人との設定がないとやはり寂しい。
『グレートトラバース~日本百名山ひと筆書き踏破』田中陽希・著
管理人:トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。大阪府生まれ。日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。