【7日間、245キロ!サバイバルマラソンへの挑戦】
『サハラを走る』-赤坂剛史・著トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
本日は、おそらくサハラ砂漠マラソンについて、類書の中でもっとも詳しく記された一冊でしょう。またアスリートからの目線ではなく、制限時間内完走を目標とする一般市民ランナーの体験記としても楽しく読めます。
サハラ砂漠マラソンを完走した知人に、「なぜ砂漠を走りたいと思ったのか?」とあるとき尋ねたことがあります。そうすると返ってきた答えは、「世界遺産を含む、日ごろ一人では走ることはできない砂漠内を走ることができるから。」
ところが、この著者がサハラ砂漠マラソンに挑戦したきっかけは、自己啓発業界では有名な、世界的なカリスマ講演家、ピーター・セージ氏の影響だったというのにはちょっと驚きましたね。
サハラ砂漠マラソンとは?
モロッコにあるサハラ砂漠で行なわれる大会のこと。期間は7日間で、総距離は約250キロ。「今日は40キロ、明日は30キロ」と、一日で走る距離はあらかじめ決まっていて、その距離毎に、大会が用意してくれたエイド(キャンプ)があります。
寝て、走って、寝て。その繰り返しで選手は七日間を走ります。七日間のうち二日間だけ、80キロ走ることになるので、そのときだけはナイトラン、夜通し走ることになります。
足元は砂地、レース中は背中に背負ったバックパック一つで生活をしないといけません。七日分の服装や食料、寝具を含めた、その重さは約10kg以上にものぼります。
一体どんな強靭なランナーが出ているのだろう?
こうした話を聞くと多くの人は思われるかもしれませんが、女性のランナーも多く、最高齢参加者は71歳の女性の方(日本人の方!)ですし、最近トレイルランナーズ大阪のツアーでもまだフルマラソンの完走経験のない20代の女性の方が「2年後にサハラ砂漠マラソンに挑戦したい。」とやってきました。実際、砂漠マラソン挑戦は珍しくなく、日本人出場者数の占める割合は多いです。
一体、どんな職業の人が参加をしているのか?
個人的に興味があって調べたことがあるのですが、医者に看護師、警察官に消防士、ランニングコーチ、ミュージシャン、カジノのギャンブラーとさまざまでした。
とんでもない!と思ってしまいますが、マラソンやトレイルランレースとも違った、砂漠を走るというのはスポーツというよりは、ある種の”冒険”なのでしょう。サハラ砂漠マラソンのように複数日程に及ぶレースは、一般的に”ステージレース”と呼ばれます。距離も100kmを大きく超え、日別に暫定順位が決まります。
よって、僕が昨年出場・優勝したヨルダンでの砂漠マラソンと異なります。僕がの出場するレースは距離はハーフから長くとも42.195kmで、アドベンチャーマラソンとも呼ばれます。マルチアドベンチャーレースともよく誤解・混同されますが、バイクやカヌーを漕いだりなどはせず、ランニング競技のみのため、これも違います。
本書の中で、「スタートしてから見た初めての日陰。こんなにも日蔭を恋しいと思ったことは、いままでの人生で初めてだ。」とありますが、砂漠で最も厳しいのは日蔭がないこと。ロードのマラソンではいくら暑いといってもビル影がありますし、トレイルでも木陰や川があります。そこが決定的に異なる点でしょう
砂漠マラソンのグランドスラムとは?
サハラ砂漠、中国のゴビ砂漠、チリのアタカマ、南極レースの4つを完走するとアドベンチャー・レースの「グランドスラム」となります。日本国内では達成者は20人以内程度ではないかと思います。体力以上に資金がハードルでしょう。レースへの出場費総額は渡航費やエントリー代を含めると500万円近くになります。
冒険談や辺境マラソンにご興味のある方でしたら、本書もぜひチェックしてみてください。
【7日間、245キロ!サバイバルマラソンへの挑戦】
『サハラを走る』-赤坂剛史・著
◆本書より
砂漠の朝はさすがに寒い。息も白い。温かい寝袋から出たくない気持ちにあらがいながら、保温性の高いアンダーウェアの上下にウィンドブレーカーを着て朝食の準備をする。サハラマラソンでは七日分の食料を背負って走り、自分の食事は自分で作るのがルールだ。だから、すでにこのときからレースは始まっていると考えたほうがいい。
こまめにスポーツドリンクを摂り過ぎていたのだろう。気がつくと背負っていた飲料水がなくなっていた。だが、CP1まであとどのくらいあるのかがわからず、再び不安になる。
スタートしてから見た初めての日陰。こんなにも日蔭を恋しいと思ったことは、いままでの人生で初めてだ。
【7日間、245キロ!サバイバルマラソンへの挑戦】
『サハラを走る』-赤坂剛史・著
管理人:トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。大阪府生まれ。日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。