【あの『Born To Run 走るために生まれた』の著者、6年ぶりの新作‼︎】
『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ―人類が失った"野生"のスキルをめぐる冒険』クリストファー・マクドゥーガル・著
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
あの『Born To Run 走るために生まれた』が発行されたのは、2010年2月。それから6年。クリストファー・マクドゥーガル氏から新刊が発売されました。 カバー表紙のサロモンアスリート風の選手が気になりますね。キリアン・ジョルネ選手はこのようなフォームではないので、誰でしょうか。
海外で発刊されたのを知ってから、邦訳を心待ちにしていました。ところが、読んでみたらこれがまた冗長な本なのです(苦笑)おそらく『Born To Run』『Eat and Run』『Go Wild 野生の体を取り戻せ!』一連のシリーズの中では、一番読書難易度の高い本かもしれません。海外本訳の独特さで、はじめはストーリーがなかなか頭に入ってきません。
読み進めていくうちに、僕がストーリーから予想だにしなかったキーワード、スーパーフード、ナチュラルトレーニング、クレタ走りにパルクール、スマートボディ(利口な身体)、マフェトン理論など興味深い話題が満載で、
気がついたらすっかり魅了され、一気に読み切ってしまいました。
本書の中で、まさかスチュー・ミットルマン氏まで登場するとは思いもしませんでした。
スチュー・ミットルマンとは?
6日間連続で100マイル(160km)を走ったりする、ウルトラランニング界の伝説。僕は参加できなかったのですが、スチュー氏が2007年ごろ一度来日し、登壇者の一人として出演・話を聞く機会がありました。(その参加費は5日間連続のセミナーで60万円!)知人が参加したのですが、そのスチュー氏が話す秘訣の一つが、「どんなランナーでも心拍数ペースさえ守れば、いくらでも走り続けることができる。」というもの。誰しもがはじめこのことを信じないんだそうです。実際にこのスチュー氏の教えを守って、メタボで運動経験なしからフルマラソンをいきなり完走し、その後はアイアンアンまで完走するようになった知人もいます。
そのスチュー氏に秘訣を教えたメンター(師匠)がなんと本書で登場します。かのトライアスロン界の伝説、マーク・アレンもこの師匠の教えを仰いでいたとは知りませんでした。このストーリーを読めば、ブログやフェイスブックなどでランナーが、「レースのスタートからどこまで突っこめるかがテーマ」「心拍数最大で行けるところまで行く」といった話を目にして(あるいは自分がそうして)、それがレース戦略としてそもそも間違いではないかと疑うようになるでしょう。
ほかに興味深かった話は、「『脱水症状や熱中症』がマラソンやウルトラランニングで深刻な問題になったのが、頻繁な水分摂取が常識となったあとというのは、どういうことなのか?」「脱水症状がマラソンランナーの死に直結すると証明した報告はひとつもない」水分補給について、あらためて考えさせられました。
読後は、ゲータレードを始めとする飲料メーカーに対し、まるで「悪の権化」みたいな印象を持つ人もいるかもしれません。あるいは、自分の食生活やトレーニング方法を見直す人もいるかもしれません。
今回も衝撃をもたらす気づきが満載の、ぜひおすすめしたい一冊です。(読書難易度高めですが)
【あの『Born To Run 走るために生まれた』の著者、6年ぶりの新作‼︎】
『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ―人類が失った”野生”のスキルをめぐる冒険』クリストファー・マクドゥーガル・著
◆本書より
あなたの身体のざっと五分の一は、蓄積された脂肪だ。それは上質な熱エネルギーで、点火されるのを待っていて、食べ物をまったくクチンいしなくても山を登り下りするのに余りあるほどのパワーがある。-ただし、そのやり方を知っていれば。
動物は着地しても地面を転げまわったりしないだろう。
筋肉が動きに抵抗するとしたら、その動きが不自然だってことだ。だったら、なんで筋肉を変化させようとする?動きのほうを変えればいいじゃないか!
彼は人類にとっての真の健康とは、エクササイズマシンとは一切関係なく狩猟採集民の動きがすべてだと確信している。
腰を上げる、上体をもちあげる、地面から立ち上がるは動物の生存の基本なのに、多くの人がうまくできていないとグラスマンは考えていた。
400ポンドのベンチプレスができても、窓によじ登って燃えさかる建物から人を助け出せない人はごまんといる。マラソンを走れても、まず靴を履かないと救助に駆けつけられない人もいる。毎朝プールで何往復も泳いでいるのに、深く潜れなくて友人を助けられないとか、波にのまれないよう岩場へ運ぶ方法を知らない人も多い。
伝説のウルトラランナーで、コムラッズで5回優勝したアーサー・ニュートンは「イギリスでいちばん暑い日でも、26マイルを走るのには一回か、多くても二回の水分補給で十分だろう」と信じていた。カラハリ砂漠のサン人はいまも、摂氏42度の暑さのなか、ほんの数回喉を潤すだけで七時間走ってみせる。
エリートランナーたちは集団の真ん中をのりのろ走るランナーたちよりも多く汗を排出しているのだ。脱水が本当に危険なら、エリートたちはそもそもどうやってゴールにたどり着くのか?論理上、速いランナーほど倒れるはず
管理人:トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。大阪府生まれ。日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。