【練習量が少なくても質を高めて結果を出す方法】
『ゾーンの入り方』室伏広治・著 Vol.130
本日の一冊は、元男子ハンマー投げアテネ・オリンピック金メダリストの室伏広治さんによる、注目の一冊。
現役引退後は、研究者や指導者として活躍。 本書は、3冊目の著書となります。
※参考:『ベストパフォーマンスを引き出す方法』
https://ameblo.jp/powersports/entry-11620125457.html
人間は普段の生活では、脳と筋力に関して言えば、本来持つ潜在能力の20~30%程度しか使っていないと言われます。その潜在能力を50%、60%にまで高めることができただけでも、もっと大きな力が発揮できるに違いありません。
私自身ロード、トレイル、100kmを超えるウルトラランニングレースには6度参加していますが距離が長くなればなるほど集中力の重要性に気づかされます。集中力が途絶えると転んだりねん挫をしたり、うっかりミスをすることが増えてきます。
本書では、室伏広治さん自身がプロアスリートとしての競技人生から得た「ゾーンの入り方」がまとめられています。
「たとえ悪天候だろうが、騒音があろうが、どんな試合環境になろうが、そこに馴染む。その環境に抗おうとしたり、悪条件を排除しようとしたりすると、なかなか集中できません。」
トレイルランニングに親しむ人に役立つ言葉もあります。ほか「スポーツの世界には「練習は裏切らない」「努力はウソをつかない」という格言がありますが、それこそがウソだと私は思っています。」世にまかり通った格言をばっさりと切る発言も。
「アスリートに限らず、人間が成長するためには、自分の力をすべて出し切ることが大切です。」
現役時代の室伏選手は「赤ちゃんハイハイ」などユニークなトレーニングを取り入れていたことで知られていますが、巻末の「自分のイメージ通りに体を動かすトレーニング」として紹介されている「室伏流エクササイズ」もユニークです。
「ゾーンの入り方」というより「全力を出し切ることの大切さ」について問いているように思い、モチベーションが高まりました。
ぜひ読んでみてください。
▼本書より
本人は「私は本気でやっている」「自分は全力を尽くしている」と思っていても、それは本当の全力ではなくて、まだまだ力が残っていることがとても多いのです。
質のいい練習や質のいい仕事の方法を見つければ、だれに言われなくても熱中できる。つまり、集中もできるし、持続することもできるのです。
胸で呼吸しようとすると、僧帽筋や胸鎖乳突筋を中心とした筋肉が必要以上に動いてしまい、胸や肩を上下動させてしまいます。腹式呼吸というものがありますが、これは呼吸を意識的に行うことで、おへそのあたりが前後にペコペコと膨らんだりしぼんだりして、集中状態に入りにくい面があります。
サークルを囲う防御ネットの間口は6メートル、回転スピードが頂点になったときにネットに当てずにこの間を通して投げるチャンスは0.04秒しかありません。遠くへ投げるというだけでなく、人間が反応できる速さを超えたコントロールが求められる競技なのです。
「平泳ぎ25メートルをできる限り手のかき、足の蹴りを少ない回数で泳げるようになろう」というチャレンジがありました。最初の蹴伸びだけで15メートル近くまで行けるようになりました。
現在のアスリートのケガの原因として、つねに安定した状態でしかトレーニングをしていないということ。
デコボコのある場所や砂利道を歩いたり、海や野山を走ったり、自然を相手にトレーニングしてみることも必要。
スポーツの世界には「練習は裏切らない」「努力はウソをつかない」という格言がありますが、それこそがウソだと私は思っています。
「いいことは取り入れて、ダメなことはやらなければいい」と思って聞いた父のアドバイスは、すべていいことばかりでした。
右左どちらか一方だけが正解なのではなく、どちらも知ることが大切なのです。
実は、その反対もあります。成功体験が成長の邪魔をするのです。よく「成功体験が人を成長させる」ということを聞きますが、そうとばかりは言い切れないのです。
日本人の国民性として、溜めこむことが好きで、あまり使おうとしない。トレーニングをまじめにやって力をつけることは得意だけれど、それを発揮するのはあまり得意ではない。
トレーニングして体を鍛えることが目的なのではなく、その力を本番で出し切ることが目的なのです。
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◆目次◆
第1章 究極の集中力をつける
第2章 ゾーンに入る
第3章 限界の超え方
第4章 ゴールへのアプローチを最適化する
第5章 「自然体」が一番強い
第6章 体を整える
《すぐできる! 室伏流エクササイズを紹介》
【練習量が少なくても質を高めて結果を出す方法】
『ゾーンの入り方』室伏広治・著 Vol.130
管理人:トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。大阪府生まれ。日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。