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『2時間で走る フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』エド・シーサ・著 Vol.057

投稿日:2015年12月9日 更新日:

【人類はフルマラソン2時間の壁を破ることはできるのか?】
『2時間で走る フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』エド・シーサ・著 Vol.057

こんにちは。トレイルランナーズ大阪の安藤大です。

フルマラソン1時間59分59秒。

大抵の人がハーフマラソンを走り追えるころに、その2倍の距離、42.195キロを走り切ってしまう。

夢の数字。果たして、そんなことが可能か?

現在のマラソン世界記録は、デニス・キメット(ケニア)選手がベルリン・マラソンで出した、2時間2分57秒。2時間まではあと2分58秒(=178秒)で、もしこれを切ることができれば「サブツー」達成となるわけですが、さまざまなランニングメディア媒体や研究者は、「生理学的に考えると2時間の壁を超えることは非常に困難」夢を見るというよりは、むしろ悲観的な見方です。

先日、12月6日に行われた福岡国際マラソンでは、その現世界記録保持者のキメット選手(ケニア)が出場しましたが、序盤から集団についていけず、5・5キロでまさかの棄権。「調子が良かっただけに残念」とコメントを残し、マラソンレースの難しさを目の当たりにしました。

本日ご紹介するのは、イギリスの新進気鋭ジャーナリスト、エド・ソーサ氏による 『2時間で走る フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』です。 発売と同時にAmazon.comで、たちまち全米ベストセラー、話題の一冊。

なぜアフリカ勢は強いのか?偉大な選手たちの家庭環境と練習環境は?高騰する賞金、ドーピング問題まで、マラソン協議の過去をたどり最前線まで丹念に取材した傑作。

本書のなかで著者は、アフリカ勢の強さの秘密、「サブ2」の壁を破るためには何が必要か、 過去のレース展開を実況しながら説明しています。 さらに、レースの行方を左右する大金、マラソン界のドーピングの闇、選手自身も把握していないという衝撃の事実まで、取り上げています。

つい先日、2015年11月25日にも「女子マラソンのガメラ、ドーピング違反」という見出しで、大阪国際女子マラソンで3連覇したタチアナ・ガメラに、4年間の出場停止処分が発表されていました。2014年に2位の赤羽有紀子さんが1位に繰り上がるそうですが、「ドーピングは、本来勝利を収める可能性のあった選手から、勝利を奪った。」と例えられますが、何ともやるせない気持ちになります。

さて、本書のエッセンスを見てみましょう。

▼ ここから

主催者が最終的に採用を決めた約26マイルのコースは、王室の子どもたちがスタートを観られるように、ウィンザー城のイースト・テラス前から始まる設計だった。

レボウは、大都市のマラソン大会にプロフェッショナリズムが導入されても、一流のレースへの世間の関心を高める効果がほとんどなかったことも理解していた。

では、プロフェッショナリズムがなした最も意義深い貢献とは?いまのマラソンを支配している東アフリカ勢を引き込んだことだ。

風洞装置による研究から、もし二時間切りのペースで走るあいだ、スタートからゴールまでラビットによって風から守られれば、100秒節約できることがわかった。

マラソンについての意外な事実、それは一流のレースの出場選手が強者揃いであるほど、大会記録が出る見込みが低くなることだ。おおぜいの猛者が力比べをするとペースが上がってから急降下しやすく、選手のリズムが崩れ、終盤で脚に乳酸がたまって、好タイムの可能性が消えてしまう。

フランスのエクス=マルセイユ大学薬学部の運動生理学者三人が、「マラソンで二時間を切るランナーの最大酸素摂取量が86ml/kg/minでなくてはならない。最大酸素摂取量が加齢によって、毎年0.43ml/kg/minずつ直線的に減少していく」と論じた。

東アフリカ出身の世界レベルのマラソンランナーが、早期からマラソンに特化したトレーニングを積めば、25歳前後で二時間の壁を突破できると予測される。

ムタイにも、自分だけの用語がある。”精気(スピリット)”だ。残忍なまでのトレーニング法に―1週間に200キロメートルを超えるすさまじい練習に―耐えるのは、この感覚を味わうためというのが、ムタイ流の考えかただ。甘美なる数分間のための、数千時間の苦しみ。緩と急、激しさと優雅さ。

ジョフリー・ムタイは、効率のいい走りの見本だ。

ムタイを正面から直に観察するのも、映像に劣らずおもしろい。外股で腰の位置は低く、ストライドを刻むごとにしなやかなふくらはぎの力が最大限に引き出され、その一方で上半身はライフル射撃の的のように静止したままだ。

人間の体には42.195キロメートルを二時間未満で走る能力があると、ムタイは信じて疑わなかった。。自分の体にはそういう能力が秘められている。

最高レベルのマラソンとは、スターtからゴールまでエネルギーをむらなく費やしていく繊細な営みであり、最速タイムが出るのはたいてい、前半と後半を同じペースで走った場合(イーブン・ペース)、または後半にペースをやや上げた場合(ネガティブ・スプリット)だ。ペースを急に上げ下げすると、記録への挑戦が水の泡になりかねない。

多くの大会の主催者はペースメーカー、別名ラビットを雇うことで、トップの選手が望んだペースがきっちり守られるようにし、向かい風かの影響をある程度少なくする(ラビット役のアスリートは、レース日程や懐具合や力量などの理由から選手としては出場せず、数千ドルの報酬でコースの限られた部分だけを走る)

立ち直りが早くなくては、マラソンランナーとは言えない。

前半のハーフを想定タイムよりもゆっくり走ったせいで2時間2分台を逃してしまったことは、ぼんやりと理解していた。それでもマカウの2時間3分38秒の世界記録に挑むことはできると信じた。マカウのタイムを破るためには、後半のハーフを61分26秒未満で走らなくてはならない。

ふたりが全力で走らなかったのはなぜか?それには”50万もの理由”があった。もしきめっとが練習仲間のムタイを負かしていたら、ムタイがWMMのポイントランキング一位の賞金50万ドルを逃す可能性があった。ベルリンまでの数年間、キメットは練習拠点の村にいる多数のランナーと同じく、ムタイに食事と住まいを提供してもらっていた。もしブランデンブルク門で、自分のボスにあたるムタイを全力て抜いていたら、村の誰もが敗れることになっただろう。

ノックスいわく「世界記録が頭に入っている状態で走り始めるのですから、そのタイムより10分も速く走る必要はありません。ランナーの意識は、世界記録より1秒でも速く走ることに集中します。脳もそのことに焦点を絞るのです。」

フルマラソンを2時間3分38秒で走るには、平均で一マイル4分42秒のペースを保たなくてはならない。1キロメートルを2分55秒だ。2時間を切るには、一マイルを4分34秒、一キロメートルを2分50秒のペースが求められる。つまり、ペースを3パーセント近く上げることになる。

フルマラソンを2時間3分38秒で走るのと、218秒速く走るのとでは、距離にすればいまのアフリカのトップランナーとヨーロッパのトップランナーほど、大きな隔たりがある。

ここまでエリートランナーの内情について掘り下げた本をほかに知りません。読後は、人類が今の世界記録をさらに更新し、限りなく2時間に近づくことは可能ではないかと肌で感じることができました。

個人的には、「サブ2が達成可能かどうか(肉体的に)」よりも、「私は、必ずサブ2を達成できる(精神的に)」と強く信じる選手が一人でも多く登場することが、達成には必要だと思います。

本書では数々のフルマラソン世界記録をさらに更新する可能性のある”、エリートランナーが登場します。ウィルソン・キプサングにデニス・キメット 、パトリック・マカウ、エマニュエル・ムタイ、そして、ジョフリー・ムタイ。個々の選手のエピソードやレース展開がとにかく詳細で面白く、思わず一気に読んでしまいました。

読むことで、これからのマラソンテレビ観戦は確実に面白くなります。これは冬の夜長に必読の一冊でしょう。

【人類はフルマラソン2時間の壁を破ることはできるのか?】
『2時間で走る フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』エド・シーサ・著







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“キャプテン”安藤大(あんどう ひろし)
トレイルランナーズ大阪代表
米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ
ランニング歴25年以上
トレイルランニング歴15年以上
コーチ指導歴12年以上

日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。

自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。

2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。

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