【みんなで考えるトレイルランニングの成長のために必要なこと】
『トレイルランニング2015』ベースボール・マガジン社
本日は、ランニングマガジン『クリール』のベースボール・マガジン社が、2014年から特集したトレイルランニング専門誌の2015年最新版。これが実に気合いの入った内容なのです。
昨年発売された、『トレイルランニング2014』は、「これ、本当に温和なあの鏑木さんの言葉?!」その鏑木さんの辛辣な発言が大きな反響を呼びました。たとえば、「質の悪い大会には出場を控えるべき」「大会主催者と参加者の両方に問題があると思います。」など。
中には、「「○○選手のセミナー」みたいなものが開かれています。でも周りは、その選手が強いだけでなんでも知っているように感じてしまうから、実際には非常危険です。」といった有名選手のセミナー・イベントを渡り歩くランナーへの警鐘まで。2014年版もいろいろと学びのある内容で、今からでもぜひ目を通しておきたい内容です。
※参考:鏑木毅が語る トレイルラン二ングの現在、過去、未来『トレイルランニング2014」
巻頭はハセツネCUP2014優勝者の上田瑠偉さんへのインタビューに始まり、鏑木毅さん、石井川弘樹さん、松本大さんへと続きます。内容は、今回も「トレイルランニングのこれから」を考える上でのシリアルなテーマとなっていますが、「スカイランニングって何?」といった身近な疑問への答えから、「100円均一グッズをカスタマイズ」といった節約に役立つアイデア案も。(僕も自分自身で使用する救急用品、特に防水フィルムや軍手などは百均で調達しています。)
ほか、奥宮俊祐選手による「レースに挑むための10ヶ条」。「トレイルランを楽しむための補給技術」。
トレイルランニングに親しんでいる人であれば誰もが目を通しておきたい、これからのトレイルランニングがどうなるの?を知ることができる内容となっています。
本書の中で、鏑木さんへのインタビューで特にシェアしたい内容をご紹介しておこうと思います。
「トレイルランニングは、ハイカーであったり土地の所有者であったり、環境面であったり、いろんなことに配慮してやらなくてはいけません。残念ですが、オー ガナイザーのなかにはそういう意識が薄い人もいます。「計測もしません。コースマーキングもしません。自己責任です」と。そういった自分勝手な行動が、こ のスポーツの全体に対する状況を悪くしてしまっている。そういう主催者に対して、今の段階ではモノを言える人がいません。組織をつくれば、代表として、勧 告したり、注意を促すことができます。参加者に対しても、そのような大会には出場を控えましょうという情報を流せる。一歩上の立場から言える組織が必要な 時期に差しかかっています。」
巻末のレースガイドについては、スポーツエントリー掲載中の大会をただ抜粋しただけのものであり、本書の中で鏑木さんが警鐘を鳴らす、「計測もしません。コースマーキングもしません。自己責任です」といった大会も多く含まれていますので、ランナーは大会サイトをチェックした上でのエントリーをおすすめします。
実際、最近トレイルランをはじめて1か月の男性が関西のある大会にエントリーし、「保険は各自で加入で、誘導はなく、地図も当日渡されるそうなんです。」「どんなコースですか?主催者はどこですか?」「わかりません。」「大会サイトをよくチェックしましたか?」「いいえ、覚えていません。」といったやりとりがありました。
信じられないかもしれませんが、ここ最近トレイルランの大会が増えるにつれ、耳にする話です。出場して大変な目に遭うのは他ならぬ自分自身なのですから、エントリーする前にチェックしておきたいものです。都市型のマラソンにエントリーするのとはわけが違います。
僕はトレイルラン大会選びの基準として、「本当に胸のうちからワクワクするか?(その景色の中を走りたいという強い思いがあるか?)」「自分の息子や娘に”完走報告”するとして、本当に胸をはって紹介できる大会か?」と決めています。一つのスポーツ競技として、自分の娘や息子に胸をはって紹介できる大会でないのであれば、何かしらがおかしい。僕はトレイルランニングというスポーツを”レディース&ジェントルマンスポーツ(紳士・淑女のスポーツ)”だと思っていますので、自分の出場する大会選びにはいつも気を配っています。
『トレイルランニング2015』ベースボール・マガジン社
◆本書より
山自体に行くのが時間的に厳しくても、東京はわりと坂が多いので、坂対策はできる。
トラック練習は、インターバルもペース走もそうですけれど、大事だと思います。ペース走であれば、山を走るより速い1km3分20~30秒で10kmや20kmを走ります。
1秒でも速く走れたらその分余裕がある。
スペインのキリアン・ジョルネ選手に勝ってみたいです。
―上田瑠偉
メディアの発信も大切ですが、メディアは必ずしも公正であるとは限らない。
トレイルの大会は「お金を払えばいいんでしょ」みたいなものと違う。トレイルは独占できません。「俺、レース出ているんだから、どけ。」というスポーツではありませんしかし、今のままだとそうなってしまうのではないかという危惧があります。
―鏑木毅
僕の人生のなかでどんなトレイルをどれだけ走ったというのは、どんなレースをどれだけ走ったかというよりも大きな意味をもっています。
レースで何位かよりも必要なのは、魅力を伝えるドキュメンタリーだ。
―石川弘樹
「スカイランニングは垂直志向の登山、トレイルランニングは水平志向のマラソンです。ただ、大きなカテゴリーとしては、スカイランニングもトレイルランニングも同じ部類です。」
「スカイランニングは夏場のスキーのイメージ」「スカイランニングの原点は登山」
―松本大
『トレイルランニング2015』ベースボール・マガジン社
管理人:トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。大阪府生まれ。日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。