【男子マラソンの世界記録は2時間の壁を超えられるか?】
『スポーツを10倍楽しむ統計学』鳥越規央・著
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
スポーツでも重要になっているデータ解析。本日の一冊は、数字が苦手な方、統計学についてよく知らない人にもわかりやすく、まとめた一冊。
以前、別の著者になりますが、『統計学が最強の学問である』という本がベストセラーになりました。本書はそのスポーツ版といってもよく、「テニス」「卓球」「サッカー」「ゴルフ」「陸上(箱根駅伝含む)」「スキージャンプ」「フィギュアスケート」「大相撲」計8のスポーツ競技をデータ解説しています。
なぜテニスでは番狂わせが起きにくいのか?
サッカーで得点が生まれやすい時間帯とは?
ゴルフのスコアメイクで重要なショットは?
興味深い話が満載です。そして、このブログ読者であるランナーの皆さまが興味のある陸上、100mやマラソンの記録の限界は?箱根駅伝で総合成績に影響を与えるのは、「花の二区」ではなく、「五区」との分析(詳しくは本署にて)。
個々のスポーツ競技のルールについては、自分で勉強する必要がありますが、本書で楽しめるのは、競技成績や勝因には統計結果に基づけば、一定の規則があるということです。
個人的に一番面白かったのは、「浅田真央はトリプルアクセルに挑む必要があるのか?」「羽生結弦に金メダルをもたらした演技構成の舞台裏」に関するデータ解析。
本署で、「女子のトラック競技の世界記録はすべて20世紀に樹立したもので、21世紀に入ってからは更新されていない。」とあります。女子の5000mの世界記録は、2008年ティルネシュ・ディババが樹立した14分11秒15。その妹のゲンゼベ・ディババ選手も陸上選手で、5000mの室内世界記録保持者です。僕は妹がこの姉の記録を破る可能性は高いのではと見ており、もし達成すれば21世紀初の女子世界記録更新になりますね。
タイム、距離、数字に興味ある方は、ぜひ読んでおきたい一冊です。
『スポーツを10倍楽しむ統計学』鳥越規央・著
◆本書より
スタンフォード大学のマーク・デニーズ教授が2008年にThe Journal of Experimental Biologyといった学術雑誌に発表した論文で、陸上競技各種目の過去100年に及ぶ各年の世界最高記録を極地解析し、回帰分析と呼ばれる統計学によって限界値を割り出している。
それによると100m走における平均速度の限界は、9秒48であるという。なお、論文が発表されたあとの2009年にボルトは9秒58秒を出している。
ボルト自身もどこまで記録が伸びるのかという質問に対して、「9秒4が限界では」というコメントを残している。
サザンメソジスト大学のピーター・ウェイアンド教授の研究チームによれば、なんと7秒14が限界値であるという結論が導かれた。
もっとものびり曽我あるのは男子3,000m。まだ限界値まで14秒もある。
マラソンは女子の記録に関しては、ほとんどの競技で限界に近い世界記録となっている。女子のトラック競技の世界記録はすべて20世紀に樹立したもので、21世紀に入ってからは更新されていない。
男子マラソンの限界はマーク・デニーの分析では、記録の限界値を2時間0分47秒としている。つまり2時間の壁を超えられないとの予測である。
「早ければ20年、遅くとも33年ごろには2時間の壁を超えることができる」ミネソタ州の医師、マイケル・J・ジョイナー
『スポーツを10倍楽しむ統計学』鳥越規央・著
管理人:トレイルランナーズ大阪代表、米国UESCA認定ウルトラランニングコーチ。大阪府生まれ。日本では数少ないマラソンとトレイルランニングの両面を指導できるランニングコーチ。大阪府出身。2012年に起業、実践と科学的知見に基づいた指導は「具体的でわかりやすい」と初心者の指導に定評がある。歯に衣を着せぬストレートな物言いが評判。
自身も現役のランナーで過去15年間で100大会以上に出場をし、ランニングを通じて日本中・世界中を飛び回るという「夢」を実現し、28か国30地域のレースに出場。
2012年から『はじめてのトレイルラン』教室を開講し、1万人超が体験する人気に。山でのマナーや安全な走り方の啓蒙活動にも注力し、グループで走る楽しさを伝え続けている。